中絶する理由

人工妊娠中絶は、年々減少しているとはいえ、年間で29万件ほどの中絶が行われているといいます。

それらの中絶は、どういった理由で行われているものなのでしょうか?

人工妊娠中絶というと、イメージとしては、未婚での妊娠、未成年での妊娠など

若いうちに妊娠してしまい中絶……といったイメージが先行していますが、実態は決してそうではありません。

少し古いですが、平成19年のデータを見ますと、20歳未満の中絶は、毎年、10代女性全体の10%前後で推移しています。

一方で、全体の30%以上という数値をたたき出しているのが、20~30代です。30~40歳では、全体の20%ほどの人が中絶を経験しており

さらに、41歳以上であっても、5%弱が中絶を行っているというデータが出ています。

このデータを見ると、必ずしも、「未成年である」ということ自体が人工妊娠中絶の理由であるとは限らないことがわかります。

中絶の総数そのものは、年々減少傾向にはありますが、比較的高い水準で推移しているのが20~29歳です。

30代での中絶も減少しているとはいえ、少なくはないことが、おわかりいただけるかと思います。

女性が、中絶の理由として挙げるものは、主に3種類です。

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1つは、「子どもを育てる余裕がない」というもの。これは大半の女性が中絶理由に挙げるもので、未成年の中絶の理由はほとんどがこれに当たるといってよいでしょう。

2つめは、「仕事や学業など、自分の責任を果たせなくなるから」というもの。

妊娠をした女性自身に、仕事や学業といった専念すべき何らかの事業があり、妊娠を継続することはできない、という理由です。

もちろん、未成年や学生の中絶理由としては、これも大きなものです。

加えて、就職をしてキャリアを積みはじめたばかりの20代女性の場合は、仕事のために中絶を選択することは決して珍しくはないのです。

中絶の理由として多いものの3つめは、「片親になりたくない、夫・パートナーとの間で問題となるので……」というものです。

非常に残念なことですが、妊娠・出産することによって、それが夫或いはパートナーとの間での障害となってしまうことがあります。

これを妊娠を継続できない理由に挙げる女性は、少なくありません。
こうした場合の多くで、留意すべきは、「家族にも相談できないまま、中絶を選択する女性がいる」ということです。

残念ながら、夫やパートナー、両親にさえも、相談することができずにクリニックを訪れる女性は、決して少なくはありません。

妊娠したという事実をたった一人で抱え込み、重いモノを背負ってクリニックの戸を叩きますが

夫やパートナーには冷たく切り捨てられ、両親や、親しい友人に話せばきっと軽蔑される

これまでのように接してはもらえないのではないか……という不安から、憔悴しきっていることも多いものです。

人工妊娠中絶は、もちろん施術のそのときも辛いものですが、後あとにまで気持ちの整理がつかない、後悔をひきずるといった心理的な影響も無視できません。

本当に相談できる人がいないのか? クリニックに訪れる前に、よく考えてみる必要はあります。

上に挙げた3つ以外の理由としては、胎児の障害の可能性、というものが挙げられます。

胎児に障害があるという可能性をもとに、人工妊娠中絶を決意する妊婦は、中絶する妊婦全体のおおよそ13%と言われています。

近年では羊水検査などを基として、胎児の障害が比較的事前にわかるようになってきていますが、これについても問題がないわけではありません。

費用が5,000円~15,000円ほど、かかるということ。

羊水検査を行っても、すべての障害がわかるわけではなく、羊水検査で異常なしと出ても、障害のある子どもが生まれる可能性は否定できないということ。

また、羊水検査は完全に安全なものではなく、副作用についても指摘されています。そうした理由から

詳しい検査を受ける前に、「胎児に障害があるに違いない」と思い込み、或いは恐怖によって、中絶を選択する妊婦も多くいるのです。

中絶全体のおよそ13%が、胎児の障害を理由としていますが、何らかの検査によって胎児の障害が明らか

確実になっているものは、そのうちの1%に過ぎないとする説もあります。

これらの理由に加えて、人工妊娠中絶を促進しているのは、「法律的な保証」であるとする意見もあります。

日本では、母体保護法によって、「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」について

人工妊娠中絶をすることができる……と定められています。この、「身体的または経済的理由により」という条項をもとに、多くの人工妊娠中絶が行われます。

法律で、理由があれば中絶してもよい、と定められていることが、日本での中絶をより気軽に行えるものとしている、とする意見もあるのです。

経済的な理由にしても、パートナーとの間の問題にしても、胎児の障害の可能性にしても

「理由があれば、中絶はしても良いものだ」という法的な考え方が、中絶の選択を安易なものにしている……その可能性も、もちろんあります。

中絶を検討してクリニックを訪れれば、にべもなく施術を拒絶されることはまず、ありません。

女性の側にもさまざまな理由がありますし、クリニックにとっては、それは営業内容のひとつでもありますから

優しく「できますよ」と言うことがクリニック側の唯一の選択肢でもあります。

いずれの場合も、中絶をするか否かの選択は、命のやりとりです。妊婦さん自身にとって

人生を左右するともいえる大きな選択であって、「中絶してよかったと思えたのは、中絶した後3日だけだった。

その後は後悔の念に毎日苛まれている……」という意見を仰る方も少なくありません。

中絶の決定には、時間的な余裕はありませんが、それでも、法的に保証されていることで、安易な選択をしようとしていないか?

クリニックからのすすめに左右されていないか? もっと他に相談できる人がいるのではないか? など、よく考えたうえでの意志決定が求められるのです。

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