私が中絶手術を行ったのは高校3年生の時でした。当時付き合っていた同い年の彼氏との間にできた赤ちゃんです。
その彼氏は同じ学校ではなく、アルバイト先で知り合った別の高校に通う男の子でした。
妊娠したことに気づいたのは、ありきたりですが生理が来なかったからです。当時は生理周期が不規則なこともあり、ただ遅れているだけだと思っていました。でも心のどこかで「もし妊娠していたらどうしよう・・・」という不安な気持ちもありました。生理予定日を2週間ほどして、妊娠検査薬を使いました。
スポンサーリンク
妊娠検査薬をドラッグストアで購入するにも非常に勇気が要りました。当たり前ですが、制服のまま学校帰りに買うことはできません。一旦家で少しでも大人っぽく見える服装に着替えて、自宅から遠いドラッグストアへ行き購入しました。特に店員さんに不審がられることもなく、すんなり購入できたのは幸いでした。
すぐさま家に帰り、誰にも知られないようにこっそりトイレで検査しました。取扱説明書には尿をかけて数分待つというような記載がありましたが、待つ必要はありませんでした。尿をかけている時点で陽性反応が出てしまったからです。
「まさか」という気持ちと「やっぱり」という気持ちが混じっていて、これから先のことを考えるととても怖くなりトイレにこもって泣きました。
もちろんちゃんと避妊はしていました。コンドームをつけていても妊娠してしまうこともあるんだと知りました。彼氏も私も異性と付き合うのは初めてで、当然そういった性行為も初めてだったから、コンドームの取り扱いに慣れていないということも大きかったと思います。
誰かに相談したかったです。
でも誰にも相談できませんでした。
私の父は非常に厳格で、彼氏がいることすら内緒にしていました。それなのに妊娠したなんて言ったら絶対怒られるし殴られる。もしかしたら家を放り出されるかも知れないと思うと絶対言えませんでした。友達に相談しても同じです。もしかしたら学校中の噂になって先生にもバレて父に連絡が行くかも知れません。悩みに悩んで彼氏に打ち明けることにしました。
彼氏を呼び出し、妊娠したことを伝えました。結婚という話には至らないかもしれないけれど、それなりのことはしてくれる、一緒に悩んでくれると思っていたんですが、彼氏から言われたのは「それ俺の子じゃない」でした。
妊娠を知った時よりも彼氏からの「俺の子じゃない」という一言がとてもショックで辛かったです。同じ高校3年生逃げたいのはわかります。でも当時の私には死にたいくらい辛いことでした。
私はシングルマザーへの道を選ぶという選択はありませんでしたので道は中絶しかありませんでした。彼氏は当然中絶費用を出してくれません、父にも言えません。私は小学生の頃両親が離婚しているのですが、母に頼ることにしました。
離婚してはいましたが、母の連絡先は知っていました。母に妊娠がわかってからのことを泣きながら伝えて父や学校にバレないように中絶手術費用の援助や同意書へのサインをお願いしました。
母の住んでいるところにある産婦人科へ行きました。大きな病院は入院が必要になるということで、日帰り手術が可能な開業医を選びました。待合室では妊婦さんがとても眩しく見え、待っている状態が辛かったです。私はその日のうちに診察と中絶手術と両方を行ってくれるものだと思っていたんですが、診察と中絶手術の説明を聞き、実際の手術は後日になりました。病院によって違うのかもしれませんね。
手術当日はとても不安で怖かったです。自分のことが優先され、お腹の赤ちゃんのことを「かわいそう」だとか「ごめんね」という気持ちは出てきませんでした。朝一番に病院へ行きました。中絶手術は全身麻酔をしていたので、実際何をされていたのかはわかりませんが、膣から器具を入れて胎児を掻き出すもので、母の話によると20分ほどだったそうです。それから30分くらいで麻酔が覚め、身支度を整えて帰りました。
本当にあっけなかったです。出血があったので整理用ナプキンをあてていました。この出血は2週間近く続きました。術後の痛みが少しありましたが、日常生活に困るというほどではありませんでした。子宮の痛みよりも胸が張った間隔が数日続きました。具体的に体のどこが、というわけではないんですが、どことなく体調がすぐれないという状態は1ヶ月ほど続きました。
中絶にかかった費用は約10万円ほどでした。私にとっては大金ですが、母にとっても大金です。私はそれまで働いていたアルバイト先を辞め、別のアルバイトを始め母にちょっとずつお金を返しました。母がいてくれたおかげで、父や学校や友達にバレることなく中絶できましたが、妊婦さんや小さい子供を連れている人を見るとちょっと辛かったです。
今は結婚し2人の娘がいますが、子供を生んで育てた今になって中絶した赤ちゃんに対して「ごめんね」という気持ちが出てきています。娘達が将来大きくなって私のような経験をしないで欲しいと切に願っています。